事業を運営していくうえで、資金繰りで困らない経営者の方はあまりいないでしょう。補助金や助成金は、基本的に返済の必要がない資金ですので、資金繰りに悩む経営者にとってはぜひとも活用したい制度だと思います。
しかし、実は、補助金や助成金は、困ったときの資金繰りに頼りにする性格のものではありません。必要以上に補助金や助成金に期待しないよう、その性質についてご紹介します。
この記事の目次
助成金は後払いが原則
世の中には様々な補助金、助成金があり、受給できる条件も金額も多種多様です。数万円の補助を受けられるものから、中には数百万円、数千万円の補助を受けられるものまであります。
これらの補助金、助成金のほとんどに共通しているのが、お金の支払は「後払い」だということです。つまり、最初に自己資金で支払いをしておいて、受給の要件を満たせばその一部を補てんされるような形で受け取ることができます。
そのため、「開業資金が不足しているので補助金で何とかしたい」「来月の資金繰りが危ないので助成金を活用したい」と思っていたとしても、補助金、助成金の性格からそういったことは難しいのが実情です。
一方で、元から支払う予定のある経費が助成を受ける対象になっているのであれば、助成金を活用できれば非常にありがたいものです。
大きく分けて2種類の補助金、助成金がある
補助金、助成金には、大きく分けて2種類のものがあります。それは、雇用関係の助成金と事業関係の助成金です。
この区分は公的なものではなく、あくまでもひとつの考え方に過ぎませんが、補助金、助成金のことを考えるうえでのひとつの基準となるものです。
雇用関連の助成金は、条件を満たせば受給できる
雇用関係の助成金とは、契約社員の方を正社員にするとか、社員のスキルアップのための研修費用を会社が持つなどした場合に、その人件費の一部や研修費用の一部を助成してもらえる、というようなものです。
このような雇用関係の助成金は、その受給要件を適切に満たしていれば受給することができますので、使い勝手は非常によいものです。
ただし、正社員として雇用するということは、継続して人件費が発生するということですので、補助金をもらったとしても会社が負担する費用の方が多くなることは間違いありません。そのため、資金繰りに困っているので、補助金をもらうために正社員を雇用する、という選択は、事業運営上は適切ではないといえるでしょう。
事業関係の助成金は、雇用関係の助成金よりも審査が厳しい
事業関係の助成金とは、販路拡大のために広告を出したり、必要な設備投資を行ったりする場合に、事業所が所在する住所の自治体等がその一部を助成してくれるものです。
また、自治体が行う事業の一部を外注したり、財団法人などが行う新技術の開発などの研究開発を外部に委託したりするような場合も、事業関係の助成金に含んでよいでしょう。
助成されている事業は自治体によって大きく異なりますので、ある自治体が助成している事業でも、ほかの自治体では助成していない、ということはよくあります。
制度によっては、助成を受けるために事業計画を作成する必要があり、その内容如何では受給できない場合があります。この点は、雇用関連の助成金とは大きく異なる部分です。
合格率はその制度によって異なりますが、研究開発関連のものは10%程度とも言われており、受給のハードルは決して低くはありません。
したがって、事業関係の助成金も、雇用関係の助成金と同様、目の前の資金繰りを改善させることには向かないものだと言えるでしょう。
ただし、研究開発関連のものは中には数千万円程度の受給を受けられるもののあり、非常に金額が大きいものです。そのため、対象となるような事業を営んでいる場合には、補助金への応募を行うことを事業計画のひとつとして位置付けて取り組むと、研究開発の方向性の検討や事業の見直しに大いに役立つでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。補助金や助成金は、上記のとおり、目の前の資金繰りを改善させるという目的では使い勝手の良くないものです。ただし、使い方によっては事業状況の改善に大きく役立つものですので、利用できる環境にあるのであれば、活用を検討していきましょう。
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税サポ編集部

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